2006 牛島達治 ぬけてゆくこと (ギャラリーマキ,東京)

      USHIJIMA Tatsuji ,Wandering with “Elusion” in Mind and Where That Gose (gallery MAKI,Tokyo)

「ぬけてゆくこと」思考の回遊とその方向性について - はじめに考えたこと

 認識しうる一様な風景と視線の行き先、それらの知覚は記憶と戯れ、やがてかすかに発熱する。そこから何かが始まりそうだが、多くの場合はそのまま熱が分散してゆき、平穏な記憶の地平に埋もれてゆく。 記憶の地平は、海洋生物の遺骸が堆積し、やがてカルスト台地を形成して来たのと同じような成り立ちをしているように思える。そういえば、脳のニューロンは、どことなくプランクトンや枝珊瑚に似ている。

 この場所では、何も特別ではなく、やがて埋もれ行くであろう知覚と記憶の関係について考察することから始める。ここに現れてくるのは、まぎれもなく「日常」であるはずだが。

 

展示の構成について

タイトル「ぬけてゆくこと」は、風景との出会いから、知覚のプロセスを模型化する試みです。

論理的に現象を導き出す装置、情動的に揺らぐ不分明な状況を提示する装置の二種と、それらに変化をもたらせる、プロペラを用いた乱数生成器の合計三つの部分から成ります。

会場の「gallery MAKI」は、永代橋の橋際、住宅用のワンルームマンションの一室に設けられたスペースです。ここに初めて訪れたとき、展示空間なのに不思議と生活感を感じさせられました。それどころか、展示空間としての機能と併存するように、日常がのぞいていて、すでに「ひとつの装置」として機能しているように思えました。この「ひとつの装置」をさらに意味を拡張すべく、日常の中の知覚と記憶の特別でない部分…を生成し、視覚化=模型化するために「ぬけてゆくこと」は、構成されています。

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